2024/05/16 03:25


難なく大気圏を突破し、宇宙船は自動操縦に切り替わった。あとは人工知能パイロット"タギーBO"に任せておけば、ふたりの望み通り「地球を眺めながら最高にハイになれる場所」へと連れて行ってくれる。


目的地に着くまで映画でも見ながらカウチロックドゥービーしようかと話していたのも束の間、艦内に警報アラームが鳴り響いた。


タギーBO「警告レベル5 警告レベル5 コノ宇宙船ハ未確認ノ小惑星ニ間モ無ク衝突シマス コノ宇宙船ハ未確認ノ小惑星ニ間モ無ク衝突シマス 」


なんてこった!


この無限にだだっ広い宇宙をどんなにテキトーに進んでも、小惑星や何かに宇宙船が衝突するなんてことは数学的にありえない!


それに加えてギャグのつもりで人工知能パイロットの音声を、ふたりの共通の友達(一番ぽんこつな友達)の声に設定していたことで余計にパニクった。


そして結局パニクったままのふたりを載せた宇宙船は小惑星にほぼ衝突するように不時着した。


「イテテテ…おい、生きてるか?」

「うーん…頭を強くぶつけたみたいだ…ケツデカギャルとの楽しい思い出が全部消えてる」


ふたりは何とか生きていた。

しかし宇宙船は大破し、修理出来そうにない。


「俺たち、ここで死ぬ事になりそうだな…まあお前は余命がいくらもないんだろ?最高の死に場所になりそうだぜ?ほら、見てみろよ」


ホームレスだった男がゆび指すほうを見ると、そこには地球が浮かんでいた。


( 余命じゃなくて嫁が…めちゃんこ怖い嫁がいるからもう自由には遊べないって言おうとしたんだけどな…)と億万長者は思ったが、なんとなく今の雰囲気で言うのもあれかなと思い、ただ黙って地球を眺めていた。


「まあせっかくここまで来たことだし、地球を眺めながら1発ハイになっとくか…ってあれ!?ウィードとボングはあるけど給水口から水が出ないぞ!おいタギーBO!どうなってるんだ?!」


タギーBO「ガガ…衝…突ノ…衝撃…ガー…水タンク大破…」


どうやらこの宇宙船に水はただの一滴も残っていないらしい。


ふたりは一瞬、ここは妥協して水なしボングでヒットしようかと話し合ってはみたものの、それでは宇宙にまではるばる来た意味がない!そんなことを言うなんてお前にはプライドがないのか!と半分喧嘩になり、結局、ボングにいれる水を探すために宇宙服を着て船外に出る事にした。


「宇宙船の外に出てみたものの…この星に水なんてあるのかな…」


「…行けばわかるさ。きっと俺たちなら見つけられる気がするんだけどな…知らんけど」





あてもなく歩き出したふたり。


星があり得ないほど近くで輝いている。


その遥か彼方に、ふたりを見守るように地球が浮かんでいた。